まぼろし の マンゴー の話(第2話)

NAKAYOSHI MANGOさん

店内に入ると、なんとも言えない、果実の熟した甘い匂いが漂っていた。そして目の前には私たちを食べてと言わんばかりの、おいしそうなマンゴーたちが並んで出迎えてくれた。今まで、本場の宮崎マンゴーは高級すぎて口にしたことが一度もなく、また栃木県でその姿を見ることがあまりなかった。そんな私でも、今食べたらおいしいだろうということが、直観的に分かった瞬間だった。

マンゴー勢ぞろい

どれにしようか、どの子がいいのか、じっくり考えるも見たこともあまりなく、食べたこともないのに分かるはずがない。そこで、店員の方に恥を忍んで聞いてみた。「どれがおいしいですか?」すると、いくつかの個体を手に取り、洗練された熟練の目で、とびっきりおいしそうな子を選んで、「この子がいいんじゃないかしら」と手渡してくれた。初めて手に持った瞬間、ずっしりとしたマンゴーは、「私を食べて」と訴えかけるように輝いていた。テレビで見る、賽の目状に剥かれたマンゴー豪快に頬張るキャスターの映像が頭のなかをよぎった。
「どうやって食べるのですか」と効くと、そのおいしい食べ方を丁寧に説明してくれ、おいしい食べ方のYoutubeのQRコードが書かれた紙を、丁寧に渡してもらった。そして早く食べたい気持ちを前面に押し出し、料金を払うと一目散に自宅に向かって走り始めた。車の中では、5歳になる息子がおおはしゃぎでマンゴーをつかみ、つぶされてしまわないかと、後部座席が気になって気になって仕方ない状況だった。
家について、早速包丁を持ち、切り分け、いよいよその瞬間が訪れた。

その黄金色に輝く姿は、食する者の気分を高揚させ、何か別次元へと誘われるような、そんな不思議な気持ちになった。その雰囲気に浸っていると、

5歳の社長が既に夢中で頬張っていた!
上等に厚く切れたマンゴーのそれも、ど真ん中の一番美味しそうな部分を!!
「まてぇぇぇぇーーー!」と心の中で叫んでいる最中にも、その果実は社長の口の中に吸い込まれていった。

しかし、それは社長だけではなかった。
その場にいた、私以外のすべての者が既に頬張っていたのだ。

「しまった、出遅れた!」

初めて買った高級マンゴー。
初めて切った高級マンゴー。
案の定、一つは失敗して果実を薄っぺらく切ってしまった。
まさしくその失敗した薄っぺらい果実の部分だけが、私の前に残っていた。
怒りを通り越し、その場が爆笑の渦に包みこまれていた。

私はきっと、またすぐに黄金の黄金色のマンゴーを買いに行くだろう。

みなさんにも、ぜひ一度、那珂川町の
NAKAYOSHIMANOGO(なかよしマンゴー)」をご賞味頂きたい!